なぜ、「体幹」を鍛える必要があるのか?
第1回|鍛えるべきは、腹筋ではなく「身体を支える土台」
私たちが考える『なぜ体幹を鍛える?』についてシリーズ化し、お伝えしていきます。
「体幹トレーニング」と聞くと、どんな運動を思い浮かべますか?
多くの人が想像するのは、肘とつま先で身体を支える「プランク」ではないでしょうか。
もちろん、プランクも優れた運動の一つです。
しかし、長く耐えられるようになったからといって、日常生活で正しく体幹を使えているとは限りません。
なぜなら、本来の体幹トレーニングの目的は、腹筋を固くすることではないからです。
体幹を鍛える本当の目的は、身体の中心を安定させ、手足を自由に動かせる土台を創ること。
今回は、なぜ私たちが体幹トレーニングを行ったほうがよいのか、その本質についてお伝えします。
そもそも「体幹」とは何なのか?
体幹とは、単純に腹筋だけを指す言葉ではありません。
頭と手足を除いた、胸、背中、腹部、腰、骨盤周辺を含む身体の中心部分です。
私たちが立つ、歩く、しゃがむ、物を持つ、振り向く。こうした日常の動作では、まず身体の中心が安定し、その土台の上で手足が動きます。
家に例えるなら、体幹は「基礎」の部分です。
どれだけ立派な柱や屋根があっても、基礎が不安定なら建物全体は安定しません。
身体も同じです。
腕や脚に十分な筋力があっても、中心が安定していなければ、せっかくの力を効率よく使えません。その結果、腰や膝、肩など、別の場所が必要以上に頑張ることになります。
腰や膝が痛いから、そこだけを鍛えればよいのか?
Bell&Goldには、腰痛、膝の違和感、肩こり、姿勢の崩れなどに悩む方が多く来られます。
しかし、痛みや違和感がある場所だけに原因があるとは限りません。
たとえば、膝に負担がかかっている方でも、実際に身体を見てみると、
- 足裏で地面をうまく捉えられていない
- 股関節が十分に動いていない
- 骨盤や体幹が安定していない
- 上半身が左右に大きく揺れている
といった、別の部分に課題が見つかることがあります。
身体は、すべてつながっています。
中心で支えられない分を、膝や腰などが代わりに引き受けている可能性もあるのです。
だから私は、痛む場所だけを見るのではなく、その方の立ち方、歩き方、呼吸、足裏の感覚、股関節や肩甲骨の動き、日頃の生活習慣まで確認します。
痛みにはさまざまな原因があるため、体幹トレーニングだけですべてを解決できるわけではありません。
それでも、身体全体の使い方を見直し、負担が一か所に集中しにくい身体を創ることには、大きな意味があります。
手足を動かす前に「中心」が必要
木を想像してみてください。
幹が安定しているからこそ、枝は大きく広がり、風が吹いてもしなやかに動くことができます。
人間の身体も同じです。
体幹という「幹」が安定しているからこそ、腕や脚という「枝」を自由に動かせます。
ここで重要なのは、体幹をガチガチに固めることではありません。
必要なときには支え、動くときにはしなやかに対応する。
この両方が必要です。
室伏広治氏の身体に対する考え方からも学べるのは、ただ筋肉を強くするのではなく、自分の身体を感じ、思いどおりに扱える状態を創ることの大切さです。
自分の身体がいま、どこにあるのか。
どこに力が入り、どこが抜けているのか。
足裏で地面をどのように捉えているのか。
こうした身体感覚があって初めて、鍛えた筋力を実際の動きへつなげることができます。
強さとは、単に大きな力を出せることではありません。
自分の力を、必要な方向へ正しく伝えられることです。
体幹トレーニングは、アスリートだけのものではない
体幹トレーニングというと、スポーツ選手が競技力を高めるために行う、特別な運動だと思われがちです。
しかし、本当に体幹が必要なのは、日常を生きる私たちです。
- 長時間立って仕事をする
- デスクワークを続ける
- 子どもや荷物を抱える
- 階段を上り下りする
- 床から立ち上がる
- バランスを崩したときに踏みとどまる
これらの動作にも、すべて体幹が関わっています。
特に40代以降は、筋力だけでなく、柔軟性やバランス能力、身体を思いどおりに動かす感覚も少しずつ変化していきます。
若い頃と同じように力任せで動いていると、身体のどこかに負担が集中しやすくなります。
だからこそ必要なのは、ただ激しく鍛えることではありません。
自分の身体の状態を知り、正しく支え、正しく動かす練習です。
体幹トレーニングは、腹筋を割るためだけの運動ではありません。
これから先も、自分の足で立ち、自分の意思で動き続けるための準備なのです。
私たちが考える、体幹を鍛える本当の目的
私は、トレーニングの目的を「体重を落とすこと」や「筋肉をつけること」だけで終わらせたくありません。
もちろん、見た目が変わることも大切です。
しかし、その先にあるものはもっと大切です。
身体が安定すれば、今まで怖かった動作に挑戦できるようになる。
疲れにくくなれば、仕事の後にも家族との時間を楽しめる。
自分の身体を信頼できれば、年齢を理由に何かを諦める必要が少なくなる。
私が創りたいのは、動かない一本の棒のような軸ではありません。
多少バランスを崩しても、自分の力で戻ってこられる軸。
環境や動きに合わせて、しなやかに変化できる軸。
それが、私の考える**「質の良い軸」**です。
体幹を鍛えることは、身体を固めることではない。
自分の身体を、もう一度自分で扱えるようにすることです。
筋肉をつけるだけではなく、動ける可能性を失わないために。
10年後も、自分らしく動き続けるために。
体幹トレーニングは、未来の自分に対する投資なのです。
次回は、「体幹は“固める”のではなく、使いこなす」
というテーマで、プランクを長く続けるだけでは動ける身体にならない理由と、呼吸、背骨、骨盤、肩甲骨を連動させる重要性についてお伝えします。
