筋肥大に必要なメカニズムとは
トレーニングを行う上で、「筋力」というのは非常に重要な要素です。
ジャンプ、スプリント、アジリティなどの体力要素を高めるには、地面に大きな力を加えて自分の身体を加速させることが必要となります。これらの体力の向上のためには筋力の向上も必要になってくるのです。
大きな筋力を発揮するには、神経筋的な要因も、筋肉そのものの大きさ(筋断面積)も必要です。イメージとしては、トレーニングで筋肥大をした筋肉を最大限に使うのが神経の役割といったところでしょうか。そして競技には単純な筋力だけでなく、パワー(筋力×速度)も必要になってきます。これらのイメージをまとめると良く見る以下の図のようになります。
今回は、トレーニングで筋肥大を起こすために必要な要素について紹介します。
筋肥大に必要な要素
筋肥大を引き起こすには、「機械的張力」「筋ダメージ」「代謝ストレス」
が必要になってきます。
① 機械的張力(メカニカルテンション)
筋肉にかかる伸張性のストレスです。トレーニング中は特にエキセントリックの局面(スクワットの下降局面など、筋が伸ばされながら力を発揮する局面)で、より機械的な張力が加わります。筋肥大をさせたければ、エキセントリックの局面で重りをコントロールしながらしっかりとした負荷をかけましょう。
② 筋ダメージ(マッスキュラーダメージ)
文字通り筋肉にかかるダメージです。トレーニングは行なった部位の筋力が強くなりますし、行った部位の筋肉が肥大します。それは筋肉がダメージを受け、修復する過程で強くなるからです。筋ダメージの観点からも、エキセントリックのトレーニングはコンセントリックのトレーニングよりも優れています。しかしこの筋ダメージが大きすぎると修復に回復が追いつかないこともあるので、トレーニング量には留意しましょう。
③ 代謝ストレス(メタボリックストレス)
筋肉が収縮をする際に生まれる代謝産物によるストレスです。レストを短くすることで、この代謝産物が溜まり(筋がパンプし)、より筋肥大を引き起こすと言われてきましたが、これは半分正解で半分間違いです。確かにレストを短くすることによる代謝ストレスは高まり、筋肥大を促進しますが、
レストが短いことで扱える重量が減り、①で挙げた機械的張力が小さくなるので、代謝ストレスが増えるメリットを打ち消してしまうのです。実際に、長いレストと短いレストでは筋肥大への効果に差はなかったとされています。
レストを長くすることで扱える重量は上がるので、筋力向上にはむしろ効果的でしょう。しかし、より短いトレーニング時間で筋肥大を引き起こしたいという場合には、レストを短くすることは有効です。
以上がトレーニング中に考慮すべき、「筋肥大に影響を与える要素」です。しかしながら実際は、これらよりもっと重要なことがあります。それが、「食事」です。これは私の主観も少し入ってきますが、なかなか筋肉がつかないという悩みを聞いたとき、トレーニングそのものよりも「食事」に問題があることが多いです。
最近は栄養についても様々な情報が簡単に得られるため、タンパク質は体重×2gを1日に
取らなければだめだとか、サプリメントはこれが良いだとか、といった情報はよく入ってきます。
しかし、いくらタンパク質をしっかり取っても、サプリメントを飲んでも、食事量が足りなければ筋肉は増えません。みなさんの筋肉がなかなか増えない場合は、上記の3つのメカニズムを参考のうえで、是非食事についても見直してみましょう☺
参考文献
- Ahtiainen, JP, Pakarinen, A, Alen, M, Kraemer, WJ,
Häkkinen, K.
Short vs. Long Rest Period Between the Sets in
Hypertrophic Resistance Training: Influence on
Muscle Strength, Size, and Hormonal Adaptations
in Trained Men.
J Strength Cond Res 19: 572, 2005.
http://nsca.allenpress.com/nscaonline/?request=get-abstract&doi=10.1519%2F15604.1 - Schoenfeld, BJ.
The mechanisms of muscle hypertrophy and their
application to resistance training.
J Strength Cond Res 24: 2857–2872, 2010. - Suchomel, TJ, Nimphius, S, Bellon, CR, and Stone, MH.
The Importance of Muscular Strength:
Training Considerations.
Sport Med 48: 765–785, 2018.